市場を読むための学び・投資の考え方

複利の力と「時間」という最大の資産

複利は、生み出した利益をふたたび投資に回すことで、増え方そのものが加速していく仕組みです。同じ利回りでも、時間が長いほど単利との差は大きく開きます。この記事では100万円を例に、3%・5%・7%で運用した場合の具体的な数字、72の法則の検算、そして単利と複利の成長カーブの違いまでを、図表を交えて確認します。数値はいずれも税金や手数料を考慮しない概算です。

複利とは何か ― 利益が利益を生む

複利とは、投資で得た利益を使わずに元本へ組み入れ、その大きくなった元本に対してさらに利益がついていく仕組みです。最初の年に得た利益が翌年は利益を生む側に回り、その循環が毎年続きます。利益を受け取って使ってしまう単利と違い、複利では「利益が利益を生む」ため、時間が経つほど増え方が加速していきます。

複利の効果は、はじめのうちは驚くほど地味です。数年程度では単利との差はわずかで、「思ったほど増えない」と感じる人も少なくありません。しかし後半になるほど差は急に開いていきます。複利は、途中でやめず続けた時間に報いる仕組みだと言えます。だからこそ、早く始めて長く続けることの価値が繰り返し強調されるのです。

3%・5%・7%で30年 ― 数字で見る複利

抽象的な説明よりも、具体的な数字のほうが複利の感覚はつかめます。次の表は、元本100万円を年3%・5%・7%で複利運用した場合に、10年・20年・30年後にいくらになるかを示したものです。あわせて、利益が利益を生まない単利で運用した場合の金額と、その差額も並べました。いずれも年1回の複利、税金や手数料は考慮しない概算です。

利回り期間複利の結果単利の結果差(複利−単利)
年3%10年約134.4万円130.0万円約4.4万円
年3%20年約180.6万円160.0万円約20.6万円
年3%30年約242.7万円190.0万円約52.7万円
年5%10年約162.9万円150.0万円約12.9万円
年5%20年約265.3万円200.0万円約65.3万円
年5%30年約432.2万円250.0万円約182.2万円
年7%10年約196.7万円170.0万円約26.7万円
年7%20年約387.0万円240.0万円約147.0万円
年7%30年約761.2万円310.0万円約451.2万円
元本100万円・年1回複利・税金や手数料は考慮しない概算。単利は利益を再投資しない場合。

表を見ると、期間が短いうちは複利と単利の差は小さいものの、30年という長い時間では差が大きく広がることが分かります。たとえば年5%なら、30年後の複利は約432万円で、単利の250万円を180万円以上も上回ります。利回りが7%になると、その差はさらに顕著です。複利の果実は、時間の後半に集中して実ることが読み取れます。

単利と複利はどれだけ違うか

同じ100万円・同じ利回りでも、単利と複利では時間とともに描く軌跡がまったく異なります。次の図は、年5%で30年間運用したときの単利(直線)と複利(曲線)の成長を重ねたものです。単利は毎年同じ額だけ増えるため直線になりますが、複利は増え方そのものが増えていくため、後半で急に上へ反り返っていきます。

単利と複利の成長カーブ元本100万円を年5%で30年運用したときの、単利(直線)と複利(曲線)の資産額の推移。複利は後半で急に伸びる。100250432(万円)0102030差 約182万円複利単利
年5%・元本100万円で運用した場合の単利(直線)と複利(曲線)のイメージ。縦軸は資産額、横軸は年数。概算値。

72の法則で概算する

複利のスピード感を暗算でつかむ道具が「72の法則」です。72を年あたりの利回り(%)で割ると、元本がおよそ2倍になるまでの年数の目安が得られます。たとえば年3%なら72÷3で約24年、年6%なら約12年、年8%なら約9年です。次の表は、この目安と、実際に複利計算で2倍になる年数を並べ、どれくらい近いかを確かめたものです。

利回り72の法則の目安実際に2倍になる年数
年3%24年約23.4年約0.6年
年4%18年約17.7年約0.3年
年6%12年約11.9年約0.1年
年8%9年約9.0年ほぼ一致
年10%7.2年約7.3年約0.1年
「実際に2倍になる年数」は複利での理論値(log2 ÷ log(1+利回り))の概算。

表のとおり、72の法則はかなり良い近似で、とくに利回りが6〜8%あたりでは実際の年数とほとんど一致します。低い利回りではわずかに長め、高い利回りではわずかに短めに出る傾向がありますが、暗算の目安としては十分実用的です。同時にこの表は、どんな利回りでも「2倍」には相応の年数がかかるという現実も示しています。短期間で何倍にもなるという話には、慎重でありたいところです。

積立でも一括でも複利は働く

複利は、まとまった資金を一度に投じる一括投資だけのものではありません。毎月一定額を投じる積立投資でも、投じたお金それぞれがその後の期間だけ複利で育っていきます。早い時期に積み立てた分は長く複利の恩恵を受け、遅い時期の分は短くなる、という違いがあるだけです。積立を長く続けるほど、早い時期の資金が生む複利の比重が大きくなっていきます。

投資信託やETFのように、分配金を出さずに内部で再投資するタイプの商品では、値上がり益や配当が自動的に再投資され、複利に近い形で資産が育ちます。一方、受け取った分配金を使ってしまえば、その分は再投資されず複利の輪から外れます。複利を活かしたいなら、「利益を受け取って使う」より「利益を再び働かせる」設計を選ぶことが基本になります。

複利が効きにくいケース

複利は万能ではありません。効きにくくなる代表的なケースがいくつかあります。第一に、利益をそのつど引き出して使ってしまう場合です。利益が元本に組み入れられないため、実質的に単利に近づきます。第二に、手数料や税金が利益を継続的に削る場合です。毎年のコストは、複利で育つはずだった部分そのものを少しずつ奪います。第三に、そもそも投資対象が長期的に値下がりしていく場合で、このときは複利どころか元本が目減りしていきます。

複利は「プラスの利回りが、長い時間、じゃまされずに再投資され続ける」という条件がそろって初めて力を発揮します。逆に言えば、コストを抑え、利益を再投資し、時間を味方につけるという地味な工夫の一つひとつが、複利の効き目を支えているのです。

タルムードの視点 ― 奪われない学びという複利

複利は、お金だけのものではありません。学びにも複利は働きます。今日理解した一つの考え方が明日の理解を少し深め、その積み重ねが数年後の判断力を大きく変えていきます。タルムードには「学びは富にまさる。富は奪われうるが、学びは奪われない」という趣旨の教えが伝えられています。市場の急落で資産が目減りする年でも、学びに使った時間は失われません。

この視点は、複利という仕組みの本質を照らします。お金の複利は相場環境に左右され、時に大きく揺れます。しかし知識の複利は、自分が積み増しをやめない限り、着実に増えていきます。市場の上下に一喜一憂する代わりに、知識という奪われない資産を毎日少しずつ積み増すこと。これは、どんな相場でも続けられる、最も再現性の高い投資かもしれません。

よくある質問

投資信託でも複利は働きますか?

はい。分配金を出さずに内部で再投資する「無分配型」や、分配金を再投資する設定の投資信託では、値上がり益や配当が再び運用に回され、複利に近い形で資産が育ちます。逆に、分配金を毎回受け取って使ってしまうと、その分は再投資されず複利の効果は弱まります。商品を選ぶ際は、分配方針が「受け取り」か「再投資」かを確認しておくとよいでしょう。

毎月の積立でも複利になりますか?

なります。積立では、投じたお金それぞれが、その後の期間だけ複利で育っていきます。早い時期に積み立てた資金は長く複利の恩恵を受け、遅い時期の資金は期間が短くなる、という違いがあるだけです。したがって、積立を早く始めて長く続けるほど、複利の比重は大きくなります。金額の大小よりも、続けた期間が結果を左右しやすい点は一括投資と同じです。

複利が効かなくなるのはどんなときですか?

主に三つあります。利益をそのつど引き出して使ってしまう場合、手数料や税金が毎年の利益を継続的に削る場合、そして投資対象そのものが長期的に値下がりしていく場合です。複利は「プラスの利回りが、長い時間、再投資され続ける」という条件で力を発揮します。コストを抑え、利益を再投資し、時間を確保することが、複利を活かす前提になります。

参考情報

複利や積立の効果は、公的機関が提供する無料のシミュレーションでも試算できます。金融庁のウェブサイトでは、毎月の積立額・想定利回り・期間を入力して将来の資産額を概算できる資産運用シミュレーションが公開されています。投資信託の仕組みや分配金の扱いについては、投資信託協会の解説も参考になります。数字はあくまで前提条件次第で変わる概算であり、将来の成果を保証するものではありません。

  • 金融庁 — 資産運用シミュレーションなどを公開
  • 投資信託協会 — 投資信託の仕組み・分配金の解説